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月別アーカイブ: 2025年8月

第20回新聞配達雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社Akisai、更新担当の中西です。

 

~新聞の規格~

 

新聞は“好きに作ればいい”媒体ではありません。高速輪転印刷・大量配布・短納期という制約のもと、品質を安定させるための規格が緻密に整えられています。本稿では、制作や広告出稿に携わる方がまず押さえるべき規格を、実務の観点でわかりやすく整理します。本記事は一般的に広く用いられる基準・慣行をまとめたもので、最終的には各媒体社の入稿要項を優先してください。


1. 判型(紙のサイズ)

新聞の「サイズ」は誌面設計の出発点。代表的な3種を押さえましょう。

  • ブランケット判:日本の一般的な朝刊サイズ。およそ 545×406mm 程度。見開きの迫力があり、全国紙・多くの地方紙が採用。

  • タブロイド判:およそ 406×273mm 程度。別刷り・地域面・フリーペーパーなどで多用。持ちやすく企画物に向く。

  • ベルリナー判:およそ 470×315mm 程度。欧州系で見られる中判。

数値は目安で、媒体・工場により数ミリ単位で差があります。トンボや塗り足しの扱いも媒体指定に従いましょう。


2. レイアウト規格:段(高さ)と段組(カラム)の違い

日本の新聞は「段」という言葉が2つの意味で使われるので混同注意。

  1. 広告の段:紙面の縦方向の高さ単位
    多くの媒体は紙面を全15段で管理(=全面広告は15段)。例)「5段×全幅」「7段×1/2」など。

  2. 記事の段組(カラム数)横方向の分割数
    紙面設計では5~7カラムが一般的。可読性・ジャンプ(行送り)・写真の比率に影響します。

デザイン実務のコツ

  • 先に「広告段」を確定 → 文字級数・写真比率・見出しサイズを逆算。

  • 見出しは“段落ち”を作らない/ジャンプを一定に。

  • 細線・罫の最小線幅を守る(0.2~0.3mm程度を目安)。


3. 用紙(ニュースプリント)の規格ポイント

新聞用紙は薄く・軽く・透けにくく・乾きやすいことが命。

  • 坪量(g/㎡):おおむね 46~58g/㎡ がよく使われるレンジ。

  • 白色度・不透明度:フルカラー普及に伴い、白色度は比較的高めが主流。不透明度は裏写り抑制に直結。

  • 環境対応:古紙配合の活用、植物油インキの採用などが一般化。
    → 用紙特性は色設計(総インキ量・ドットゲイン)とセットで考えるのが鉄則。


4. 印刷方式と色再現の基本

新聞の多くはコールドセット・オフセット輪転。乾燥工程を設けないため、インキが紙に浸みやすい=商業印刷(チラシや雑誌)とは別の色設計が必要です。

  • 網点線数:おおむね 80~100 lpi が目安(紙・工場により差)。

  • ドットゲイン(網点増大):大きめに見積もる前提でトーンカーブを作る。

  • 総インキ量(TAC):過飽和を避けるため上限を設定(しっとりしやすい紙面で裏汚れの要因に)。

  • 黒の扱い:細文字・罫はK版1色を基本に。合成黒(リッチブラック)はにじみ・見当ズレのリスク。


5. 画像・図版の実務規格

紙のにじみを前提に、“必要十分”を狙うのがコツ。

  • 写真解像度:原寸で200~250dpiを目安(過度な高解像はかえって崩れる)。

  • 二階調(モノクロロゴ・バーコード等)600~1200dpiを目安。

  • 細線:0.2~0.3mm以上。ヘアラインは避ける。

  • 色分解:新聞向けICC(ニュースプリント用プロファイル)で分解し、中間調の締まりを確保。

  • 図表:シンプルな配色と太めの罫。小数点・単位・凡例を省かない。


6. タイポグラフィ(文字規格)

新聞は“読ませる媒体”。可読性最優先でルール化します。

  • 本文級数:媒体の指定に合わせる(無理な縮小禁止)。

  • 行長:1行の文字数を抑え、視線の戻りを防ぐ。

  • 字間・行間:本文は詰めすぎない。見出しは字間をやや広めに設定。

  • 禁則処理:約物の行頭・行末を厳守。縦横混在時はルールを明文化。

  • UDフォント(可読性配慮書体)の採用を検討。高齢読者・弱視の方にも読みやすい紙面へ。


7. 広告入稿のファイル規格

近年の主流はPDF/Xベースの入稿。新聞向けに最適化されたプロファイル・プリセット(N-PDFなど)が用意されているケースが多く、プリフライト(事前検証)は必須です。

  • 対応形式:PDF/X-1a(透明効果を分割)/PDF/X-4(透明ライブ)のいずれかを媒体が指定。

  • フォント:原則埋め込み(一部媒体はアウトライン指示)。

  • カラーモード:CMYK(特色不可/あるいは限定許可)。

  • オーバープリント:黒文字は原則オン。他は意図しない乗算に注意。

  • トンボ・塗り足し:媒体の指定寸法どおり。


8. 校正・検版・訂正の運用規格

時間との戦いになる新聞制作こそ、手順の標準化が品質を救います。

  1. プリフライト:フォント・画像解像度・カラースペース・総インキ量。

  2. ソフト校正:100%表示でエッジ(細線・小号数・濃度ムラ)をチェック。

  3. 色校正:主要写真は新聞向けプロファイルで打ち出して確認。

  4. 版下チェック:版面ズレ(見当)、段回り、抜き・ヌキ抜けを確認。

  5. 訂正ルール:差し替え締切・連絡経路・責任者を明文化。


9. デジタル(電子版)との橋渡し規格

紙とWebを行き来する時代、メタデータの一貫性が価値を生みます。

  • 見出し・サブ・リードの整合(クリックを誘うために意味を変えない)。

  • 更新履歴の可視化(初報/続報の区別)。

  • 写真の代替テキスト図表のデータ出典の記述。

  • 構造化データ(記事種別・タグ)を紙面設計段階から意識。


10. よくある“つまずき”と回避策

  • 写真が紙面で沈む → 新聞向けICCで再分解。中間調カーブ総インキ量を見直し。

  • 細文字がつぶれる → K版1色・級数アップ・追い込み禁止。

  • PDFで色が変わる → 出力先プロファイルを統一。PDF/X-1aとX-4を混在させない。

  • 段サイズの誤認 → 「広告の高さ=段」「記事の段組=カラム」をチームで共有。


11. これだけ押さえる“最低限チェックリスト”

  • どの判型か?(ブランケット/タブロイド/ベルリナー)

  • (高さ)とカラム(横分割)の指定は?

  • 用紙前提に合わせた網点・総インキ量になっているか?

  • 画像は原寸200~250dpi、ロゴは600~1200dpi相当か?

  • PDF/Xの入稿条件(X-1a or X-4)、フォント埋め込みはOKか?

  • 締切・差し替えのルールと連絡経路は明文化されているか?


12. テンプレ:発注・入稿仕様書(雛形)

  • 媒体名/版建て:______

  • 判型:______ 全15段/全幅(mm)

  • カラム数:____(1カラム幅:__mm)

  • 広告サイズ:__段 × __(全幅/○分の○)

  • 画像基準:写真 原寸__dpi/二階調__dpi

  • カラープロファイル:新聞向けICC(指定があれば記載)

  • 総インキ量上限:__%(媒体基準)

  • 入稿形式:PDF/X-__(トンボ・塗り足し__mm、フォント埋め込み)

  • 校正方法:ソフト/色校(校正刷り条件を明記)

  • 締切:初稿__、校了__、差し替え最終__

新聞の規格は「制約」ではなく、完成度を最短で安定させるための共通言語です。
判型→段・カラム→紙→色→画像→入稿→校正の順に上流から決めていくだけで、手戻りは劇的に減ります。まずは自社の標準プリセット(ICC/PDF/X/プリフライト)を整備し、チーム全員で同じ“ものさし”を使いましょう。

 

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第19回新聞配達雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社Akisai、更新担当の中西です。

 

~正しい情報~

 

SNSのタイムラインでは「速報」が常に更新され、誰もが発信者になれる時代です。情報は秒で拡散しますが、信頼は一朝一夕では醸成されません。こうした環境で、新聞が果たす最大の公共的価値は「正しい情報」を社会に届け、判断の土台を支えることです。速度よりも検証を優先する姿勢は、デジタル時代にこそ希少で高価な資産になっています。

1. 情報過多の時代に起きること

  • ノイズの増加:真偽が混在した断片があふれ、受け手は取捨選択の負荷に晒されます。

  • 共鳴室(エコーチェンバー):自分と同意見の情報ばかり目に入り、偏りが強化されます。

  • 誤情報の加速:刺激の強い内容ほど共有されやすく、訂正より拡散が速い。

新聞はこの「騒がしい空間」に、検証を通した情報と編集判断という信号を差し込む役割を担います。

2. 新聞の「正しさ」を支える仕組み

  • 複数人の編集・チェック:記者→デスク→校閲と、複眼で事実関係や表現を確認。

  • 裏取り(独立した検証):一次資料・現場取材・関係者の相互照合。

  • 証拠の扱い:匿名情報の信頼度評価、データの取得・加工プロセスの検証。

  • 訂正・おわびの明示:誤りがあれば公に訂正し、記録に残す。

この“仕組み化された慎重さ”こそが、誤報の連鎖を断ち切る防波堤になります。

3. スピード vs 正確性のトレードオフ

速報性は重要ですが、未確定情報の断片を急いで流すほど、後の訂正コストは大きくなります。災害・事故・金融など高リスク領域ほど、新聞は「分からないことは分からないと書く」姿勢を貫きます。これは弱さではなく、社会的責任に根ざした強さです。

4. アルゴリズム時代の公共性

プラットフォームの最適化は「滞在時間」や「反応率」を目的化しがちです。新聞の編集判断は、公共性・重要性・多角性を軸に配置します。見出しの強さではなく、社会的意義を基準にニュースの重み付けを行う点が、アルゴリズム配信とは本質的に異なります。

5. 誤情報の社会的コスト

  • 民主主義:誤った前提で世論形成が進むと、選挙・政策の質が損なわれる。

  • 市場:風評は企業価値や個人の生計を一瞬で揺らす。

  • 防災・医療:不正確な情報は命に関わる判断を誤らせる。
    新聞の厳密さは、こうした外部不経済を抑える公共インフラでもあります。

6. データジャーナリズムと再現性

統計・公開情報・裁判記録・入札公告などを丹念に読み解くデータ取材は、主観ではなく再現可能な根拠に基づく報道を強化します。図解・方法開示・限界の明示が、読者の検証を可能にし、信頼の透明性を高めます。

7. デジタルで強化できる透明性

  • 出典リンクの明示

  • 訂正履歴・更新理由の公開

  • 見出しと本文の整合チェック(クリックを誘うだけの表現を避ける)

  • 生成AIの活用範囲・ガイドラインの提示
    紙面の厳格さを、デジタルの可視化でさらに補強できます。

8. 読者ができるニュース・リテラシー

  1. 見出しだけで共有しない:本文・一次資料まで当たる。

  2. 日付と初報・続報の区別:古い記事の再拡散に注意。

  3. 出所の筋を確認:公式発表か、匿名情報か、どの立場の誰か。

  4. 複数媒体を読む:論点の多角化でバイアスを調整。

  5. 画像・動画の検証:逆画像検索、メタデータ、地理特定の基礎を知る。

  6. 訂正文化を評価する:誤りを直ちに正す媒体を信頼する。

9. ローカルを支える地域紙の力

市議会、学校、医療、地域企業。全国メディアが取り上げにくい小さな公共圏を、地域紙は継続的に監視・記録します。顔が見える距離での取材は、地域の説明責任(アカウンタビリティ)を保つ生命線です。

10. 企業・行政にとっての意味

正確な報道は、危機管理・IR・コンプライアンスの要です。誤情報への初動対応は迅速・正確・一元化が原則。新聞の検証型報道は、ステークホルダーとの信頼関係を長期資本として積み上げます。

11. 学校教育とニュース教育

読解力・統計リテラシー・倫理の基礎を、新聞記事を教材に育てることは有効です。主張と事実、データと解釈、意見と根拠を分けて読む訓練が、将来の有権者・消費者としての自立を助けます。

12. KPIでは測れない価値:信頼資本

PVやUUは重要ですが、「正しい情報」へのこだわりは数値だけで測れません。時間をかけた裏取り、鋭い質問、迷ったときに踏みとどまる勇気。こうした無形資産が、最終的には読者の継続購読・広告価値・社会的評価として回収されます。

遅さがつくる価値

拡散の速さがニュースの価値を決めるわけではありません。むしろ、遅さによって担保される正確性が、社会の意思決定を静かに支えています。情報社会で新聞が守るべき約束はシンプルです。

「分かるまで書かない。書くときは根拠を示す。間違えたら直ちに正す。」
この約束を信じる読者がいる限り、新聞の価値は深化し続けます。

 

 

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