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第20回新聞配達雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社Akisai、更新担当の中西です。

 

~新聞の規格~

 

新聞は“好きに作ればいい”媒体ではありません。高速輪転印刷・大量配布・短納期という制約のもと、品質を安定させるための規格が緻密に整えられています。本稿では、制作や広告出稿に携わる方がまず押さえるべき規格を、実務の観点でわかりやすく整理します。本記事は一般的に広く用いられる基準・慣行をまとめたもので、最終的には各媒体社の入稿要項を優先してください。


1. 判型(紙のサイズ)

新聞の「サイズ」は誌面設計の出発点。代表的な3種を押さえましょう。

  • ブランケット判:日本の一般的な朝刊サイズ。およそ 545×406mm 程度。見開きの迫力があり、全国紙・多くの地方紙が採用。

  • タブロイド判:およそ 406×273mm 程度。別刷り・地域面・フリーペーパーなどで多用。持ちやすく企画物に向く。

  • ベルリナー判:およそ 470×315mm 程度。欧州系で見られる中判。

数値は目安で、媒体・工場により数ミリ単位で差があります。トンボや塗り足しの扱いも媒体指定に従いましょう。


2. レイアウト規格:段(高さ)と段組(カラム)の違い

日本の新聞は「段」という言葉が2つの意味で使われるので混同注意。

  1. 広告の段:紙面の縦方向の高さ単位
    多くの媒体は紙面を全15段で管理(=全面広告は15段)。例)「5段×全幅」「7段×1/2」など。

  2. 記事の段組(カラム数)横方向の分割数
    紙面設計では5~7カラムが一般的。可読性・ジャンプ(行送り)・写真の比率に影響します。

デザイン実務のコツ

  • 先に「広告段」を確定 → 文字級数・写真比率・見出しサイズを逆算。

  • 見出しは“段落ち”を作らない/ジャンプを一定に。

  • 細線・罫の最小線幅を守る(0.2~0.3mm程度を目安)。


3. 用紙(ニュースプリント)の規格ポイント

新聞用紙は薄く・軽く・透けにくく・乾きやすいことが命。

  • 坪量(g/㎡):おおむね 46~58g/㎡ がよく使われるレンジ。

  • 白色度・不透明度:フルカラー普及に伴い、白色度は比較的高めが主流。不透明度は裏写り抑制に直結。

  • 環境対応:古紙配合の活用、植物油インキの採用などが一般化。
    → 用紙特性は色設計(総インキ量・ドットゲイン)とセットで考えるのが鉄則。


4. 印刷方式と色再現の基本

新聞の多くはコールドセット・オフセット輪転。乾燥工程を設けないため、インキが紙に浸みやすい=商業印刷(チラシや雑誌)とは別の色設計が必要です。

  • 網点線数:おおむね 80~100 lpi が目安(紙・工場により差)。

  • ドットゲイン(網点増大):大きめに見積もる前提でトーンカーブを作る。

  • 総インキ量(TAC):過飽和を避けるため上限を設定(しっとりしやすい紙面で裏汚れの要因に)。

  • 黒の扱い:細文字・罫はK版1色を基本に。合成黒(リッチブラック)はにじみ・見当ズレのリスク。


5. 画像・図版の実務規格

紙のにじみを前提に、“必要十分”を狙うのがコツ。

  • 写真解像度:原寸で200~250dpiを目安(過度な高解像はかえって崩れる)。

  • 二階調(モノクロロゴ・バーコード等)600~1200dpiを目安。

  • 細線:0.2~0.3mm以上。ヘアラインは避ける。

  • 色分解:新聞向けICC(ニュースプリント用プロファイル)で分解し、中間調の締まりを確保。

  • 図表:シンプルな配色と太めの罫。小数点・単位・凡例を省かない。


6. タイポグラフィ(文字規格)

新聞は“読ませる媒体”。可読性最優先でルール化します。

  • 本文級数:媒体の指定に合わせる(無理な縮小禁止)。

  • 行長:1行の文字数を抑え、視線の戻りを防ぐ。

  • 字間・行間:本文は詰めすぎない。見出しは字間をやや広めに設定。

  • 禁則処理:約物の行頭・行末を厳守。縦横混在時はルールを明文化。

  • UDフォント(可読性配慮書体)の採用を検討。高齢読者・弱視の方にも読みやすい紙面へ。


7. 広告入稿のファイル規格

近年の主流はPDF/Xベースの入稿。新聞向けに最適化されたプロファイル・プリセット(N-PDFなど)が用意されているケースが多く、プリフライト(事前検証)は必須です。

  • 対応形式:PDF/X-1a(透明効果を分割)/PDF/X-4(透明ライブ)のいずれかを媒体が指定。

  • フォント:原則埋め込み(一部媒体はアウトライン指示)。

  • カラーモード:CMYK(特色不可/あるいは限定許可)。

  • オーバープリント:黒文字は原則オン。他は意図しない乗算に注意。

  • トンボ・塗り足し:媒体の指定寸法どおり。


8. 校正・検版・訂正の運用規格

時間との戦いになる新聞制作こそ、手順の標準化が品質を救います。

  1. プリフライト:フォント・画像解像度・カラースペース・総インキ量。

  2. ソフト校正:100%表示でエッジ(細線・小号数・濃度ムラ)をチェック。

  3. 色校正:主要写真は新聞向けプロファイルで打ち出して確認。

  4. 版下チェック:版面ズレ(見当)、段回り、抜き・ヌキ抜けを確認。

  5. 訂正ルール:差し替え締切・連絡経路・責任者を明文化。


9. デジタル(電子版)との橋渡し規格

紙とWebを行き来する時代、メタデータの一貫性が価値を生みます。

  • 見出し・サブ・リードの整合(クリックを誘うために意味を変えない)。

  • 更新履歴の可視化(初報/続報の区別)。

  • 写真の代替テキスト図表のデータ出典の記述。

  • 構造化データ(記事種別・タグ)を紙面設計段階から意識。


10. よくある“つまずき”と回避策

  • 写真が紙面で沈む → 新聞向けICCで再分解。中間調カーブ総インキ量を見直し。

  • 細文字がつぶれる → K版1色・級数アップ・追い込み禁止。

  • PDFで色が変わる → 出力先プロファイルを統一。PDF/X-1aとX-4を混在させない。

  • 段サイズの誤認 → 「広告の高さ=段」「記事の段組=カラム」をチームで共有。


11. これだけ押さえる“最低限チェックリスト”

  • どの判型か?(ブランケット/タブロイド/ベルリナー)

  • (高さ)とカラム(横分割)の指定は?

  • 用紙前提に合わせた網点・総インキ量になっているか?

  • 画像は原寸200~250dpi、ロゴは600~1200dpi相当か?

  • PDF/Xの入稿条件(X-1a or X-4)、フォント埋め込みはOKか?

  • 締切・差し替えのルールと連絡経路は明文化されているか?


12. テンプレ:発注・入稿仕様書(雛形)

  • 媒体名/版建て:______

  • 判型:______ 全15段/全幅(mm)

  • カラム数:____(1カラム幅:__mm)

  • 広告サイズ:__段 × __(全幅/○分の○)

  • 画像基準:写真 原寸__dpi/二階調__dpi

  • カラープロファイル:新聞向けICC(指定があれば記載)

  • 総インキ量上限:__%(媒体基準)

  • 入稿形式:PDF/X-__(トンボ・塗り足し__mm、フォント埋め込み)

  • 校正方法:ソフト/色校(校正刷り条件を明記)

  • 締切:初稿__、校了__、差し替え最終__

新聞の規格は「制約」ではなく、完成度を最短で安定させるための共通言語です。
判型→段・カラム→紙→色→画像→入稿→校正の順に上流から決めていくだけで、手戻りは劇的に減ります。まずは自社の標準プリセット(ICC/PDF/X/プリフライト)を整備し、チーム全員で同じ“ものさし”を使いましょう。

 

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